第3章 魔物の脅威
目を開ければ、昇ってきたばかりの太陽が部屋を明るく照らしていた。
洗面所から水の流れる音がするから、きっとアオネさんが顔を洗っているのだろう。
……ところで
(さっきからある、布団の中のこの棒は何だろう)
自由が利く左足で蹴ってみる。固すぎず柔らかすぎず、そんな感覚。
思い切って手を入れてその棒を触ってみると
(繋がってる……)
俺の身体と繋がっていた。
夢での出来事を一気に思い出し、布団を全部剥ぐと、ベッドの上には俺にちゃんと繋がってる両足があって。
右足が動かない。というか感覚がない。そこに足があるのは見えてるのに無い。
「ああああああああああああああ!!!」
叫べばどうにかなるとは思わなかった。でも、このやり場のない感情は何なんだ!
アオネさんが洗面所から慌てて飛び出して、ベッドの上で頭を抱えて叫ぶ俺の背中を撫でた。
「うわああああああああああああ!!!」
奪われた!奪われた!本当に奪いやがった!俺の足をあの魔王は奪った!
「ああああああ、ああああーあああ!!」
じゃあ今日も来るのか?あの夢を今夜も見るのか?嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!絶対嫌だ!あんな苦しいの見たくない!
「うわあああああーああああああ!!!」
どうして俺なんだ!どうして!どうしてどうして!俺以外にもお前を倒そうとしてる奴らはごまんといる!よりによって俺かよ!
「ああああああ!ううっあああ、あああ!」
突然、誰かに抱きつかれた。
俺は思わず叫ぶのをやめた。
自分は顔を覆っていて分からないけどこの匂いは、ヤチさんとアオネさん?
「ヒナタ」
蚊が鳴くような声が聞こえた。
「ヒナタが苦しいと、私も苦しいよぉ……」
……泣いてる。ヤチさんが泣いてる。
抱きしめる力が強まる。きっとアオネさんだ。
顔から手を外すと、腰に抱きつくヤチさんがいて、俺とヤチさんをまとめて抱き竦めるアオネさんがいた。
「……っ……俺、」
自然と涙が溢れてきて、止められない。
「足が、動かないんだ……」
少しずつ溢れ出る涙のように、俺は全てを話した。