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【FHQ】勇者の物語

第3章 魔物の脅威


一連の騒動から数日後。

「ヒナタいる?」

アズマネさんが昼の食堂に姿を現した。

「はい!どうしました?」
「……写真が出来たよ」

俺の胸の奥がうるさくなった。

「場所を変えよう」

アズマネさんの提案に俺は首を縦に振った。

「はい。ーーーヤチさん!俺ちょっと抜けるね!」
「うん!」

ヤチさんは俺とアズマネさんを見て、一瞬その笑顔が引き攣った。















宿の裏の倉庫で3枚の黒くて硬い紙を貰う。
ゆっくり裏返すとそこには

「…………!!」

黒くて暗くて吸い込まれそうな程大きな穴が写っていた。

かつて雪ヶ丘村に流れていた1本の川が、滝のように穴へ吸い込まれていっている。
村を囲っていた大きな柵の破片が穴へ落ちていく瞬間が写っていた。
いつだったかにイズミンとコージーと3人で登った木が無い。
ナツが初めて歩いた公園が無い。
イズミンがくれたTシャツを売る土産屋が無い。
コージーがくれたヒマワリの種を売る花屋が無い。
母さんの友達の牧場が無い。
父さんが働いていた役場が無い。
アオネさんがいつも通ってきた門が無い。

俺が見慣れた景色はそこには無かった。

でもこの写真の撮影場所は、家族でよくピクニックに行った村の外れの高い丘。何度も行っているから分かる。

景色がぼやけ始めた。
目頭が熱い。
頬を何かが伝う。
雫が写真を持つ手を濡らして、写真も濡らした。

俺はしゃくりあげた。

大声で、ここがどこかも忘れて、誰がいるのかも忘れて。

ただ、ただ、泣いた。

膝をついて、うずくまって。

地に頭をつけて、のたうつように。





















頭が痛い。

目が回る。

気持ち悪い。

体が重い。

何も食べたくない。

いつかに言ってくれた言葉も忘れた。

いきたい。

父さんのところへ。

母さんのところへ。

ナツのところへ。

イズミンのところへ。

コージーのところへ。

みんなのところへーーー





















「ヒナタ!!」




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