第13章 焦燥
モブリットside
今日は休みの日だったが、なぜかハンジ分隊長に起こされて、食堂へと向かった。まだ半分夢の中にいるようにして食事を取り始めたが、目の前に来た女性を見て俺は一気に目を覚ました。
モブリット「リン...なのかい..?」
シナ「あっ、モブリットさん!ルーカスさん!へへーん、リンさんすごく綺麗でしょー!!リンさんが大切な用があるからって、私が化粧をしてあげたんですよー!!」
この前、一緒に買ったワンピースを着ていたため、その女性がリンだとすぐ気付くことができたが...それにしても化粧でこんなにも変わるのか...リンは眩しいほどに美しかった。
驚いた顔をしているであろう俺を見て、リンは不安そうに言った。
「変じゃないですか...?化粧をするのなんて初めてなので、なんか変な感じで...」
モブリット「そ、そんなこと...」
シナ「変なわけないですよー!!」
不運にも、買い物の時と同じく、シナに遮られてしまった...。
モブリット「また、遮られた...。でも、本当に一段と美しく見えるよ。」
気の利いた言葉なんて思いつかなくて、俺は思ったままをくちにした。だが、
ルーカス「それで、そんな格好をして、一体どこに行くんだ?」
確かに、そうだ。今日は休みの日だから、基本的にどこへ出掛けてもいいのだが...。わざわざこんなに綺麗にしてどんな用だろうか。
「ハンジさんの...」
シナ「そんなの男の人のところに決まってるじゃないですかぁ!!女性が着飾るときなんて、デート以外ありませんよ!!あっ、もう時間じゃないですか?さあさあ、行きましょう!!」
リンは何か言いかけていたが、シナがそれを遮ってリンを連れて行ってしまった。
男の人..デート...今までに味わったことのない喪失感が襲って、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
あぁ...そうだよな。リンだって、年頃の娘なんだ。着飾って男に会いに行くこともあるか..。でも、なんで、今までそのことに気づかなかったのだろう。リンが側で笑ってくれていることにいつの日か、満足して、俺はリンがいつか誰かのものになるなんて考えもしなかった。
それなのに、追いかけることができない自分をバカだと思った。