第16章 約束
ミカエルside
幸いなことに、液体はほんの少ししか目に入らなかったようで、数日眼帯をつけて安静にすれば大丈夫のようだった。
リヴァイ「ったく、片手で馬を走らせるやつがどこにいるんだ。ただでさえ、乗馬は下手くそなくせに...。」
「文句を言わないでくださいよ。私だって必死だったんですから。」
翌日、私とリヴァイ兵長は久々に月を見に、いつもの訓練所の木のもとへ来ていた。
リヴァイ「にしても、片目じゃ月が見にくいな...。」
「それも、文句を言わないでください。隊長自ら巻いてあげたんですから。」
リヴァイ 「...隊長の話、引き受けたんだな。」
「はい。私は私にできることをします。イリスさんが信じてくれたように。」
リヴァイ 「...そうか。」
リヴァイ 「クソっ、これじゃここにきた意味がねえじゃねえか。おい、もう眼帯取るぞ!」
「だ、ダメですよ!今日はそのまま、見えにくいまま見てて下さい!」
リヴァイ 「ちっ...今日の月はお前の独り占めだな。」
「...はい。今日は私だけのものです。」
隣で不機嫌な顔して必死に月を見ようとする彼を、私はずっと見つめていた。
昨日、液体をかけた犯人は、明らかに私を狙っていた。最近、表に出ることが多くなったせいか、プレミンジャー家のものが動き出したのかもしれない。
やつらなら、あんな液体を使うことも容易に考えるだろう。私は、あとどれだけ逃げていられるだろうか..。
(リヴァイ兵長...。私はいつまであなたの側にいられるのかな。運命がまた動き出しても、私は最後まで足掻いて、あなたの側にいます。)
リヴァイ「なんだ...。月を見てたんじゃないのか?」
いつのまにか、リヴァイ兵長の顔が近くにあった。私が驚いて離れようとしたのを、兵長が肩を掴んで止めた。
リヴァイ 「...。お前は希望の妖精だとかなんとか言われてるらしいな。」
「...は、はい。」
リヴァイ「だが、俺はお前に妖精のように消えてもらっては困る...。お前のことは、巨人からも、液体をかけてきたやつからも、俺が守る...!!」
「...!!」
兵長の、まるで心を読んだかのような言葉に驚いた。
どういう意味でそれを言ったのかは分からなかったけど、兵長の真剣な眼差しに、私はますます隠し事をしている自分が嫌になった。