第3章 ハニー・ナースコール②
「という訳で…食事することになったんですけど。」
七七七は、風呂上がりに夢野への電話での報告をしていた。片手には缶チューハイを持って。
「いいじゃないか。チャンスだね。」
電話の向こうからは彼の声と一緒に騒がしい音楽が聞こえてくる。
「そうですけど、ほんっとに今回こそ頼みましたよ。」
「ん?何の話だい?」
「私は貴方のエサじゃないんですからね。精気はあげませんよ。」
「うーん、よく聞こえないなぁ。」
彼の白々しい態度に、七七七は思わず缶を握る手に力が入る。
「とにかく、日時はまたおって連絡します。それでは失礼します!」
ありったけのボタンを力で通話ボタンを押して、七七七はグビグビとチューハイを飲み干した。
大きく息を吐いた後は、むなしい静かな空間があたりに漂う。
(今頃、夢野さんは女の子と…)
少し酔いが回ってくるのを感じながら、今まで彼に身体を触られた記憶を巡る。
あんなことやそんなこと、甘い囁きも全部、私だけに向けられたものではない。
触られるのもいつも変身魔法がかかっている時。素の自分のまま、触れられたことは1度しかなかった。
机の上の鏡に映るのは、美しい女性。そっとその顔に手で触れると、キュッと胸が締めつけられた。
(もう寝よう…。)
悶々とした気持ちを抱えたまま、七七七は眠りについた。