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虎の姉は猫となるか

第1章 探偵社


「俺は今から社に戻る。お前は」
「私は貴方についていきます。弟についていきたかったけど拒否されちゃったし、その後弟と合流するためには貴方についていかないと無理だもの」
「なっ……」
「貴方のパートナーも私が拒否された理由に一役買ってるの。もちろん、断らないわよね?」
「ぐぅ……くっそっ! どいつもこいつも人の予定をっ!」
「別に私は貴方の予定を変えろ、とは言ってないわ。予定通りに動けばいいじゃない。私はそれについていくだけよ?」

男性の言葉に被せるように宣言すれば、目を見開いた直後、顔を赤くさせて言葉も出ない様だった。
怒り心頭な様子だけれど、それはこちらだってそんなに変わらない。何しろ、傍に居ようとしたのにやんわりと遠回しに私を巻き込むなと示唆したのはこの男性の相方だ。
それを指摘すれば、この男性は黙り込んでしまった。真面目過ぎるのも大変そうだ、と思わず同情してしまうけれど顔には出さない。
使える物は何でも使うのだ。これを伝手に衣食住を確保できれば尚良いのだから使わない手はない。
しばしのにらみ合いの後、舌打ちをしたこの男性が踵を返して歩き出したのを私は意気揚々とした気分で追いかけた。
足のコンパスの違いを俊敏性でカバーして、人ごみを縫って歩くことしばし……男性が辿り着いたのはとあるビルの一室だった。

「ここ、武装探偵社……?」
「なんだ、知らないでついてきたのか」
「だって貴方たちと弟が自己紹介とかしてる頃は突然移動してしまった弟を探して歩いてる最中だった者、知るわけないじゃない」
「貴様、いちいちっ!」

扉の前で思わず呟いた言葉に嫌味を言われたので大人げなく返してやったら、面白いくらいに目くじらを立ててきた。
澄ました顔でチラリと見上げてやればまた舌打ち。それ、お客の前でもやるのかしら? なんて余計なことを考えながら事務所に入る男性を追う。
と、目の前で扉がバタン! と閉められてしまった。部外者は立ち入り禁止ってことかしら……?
とはいえ、このままここに居るのも手持無沙汰だ。仕方ない、と私は零れるため息をそのまま吐き出しながら周囲を見渡す。
誰も居ないことを確かめてから、私は弟にも秘密にしている異能力を使ってその場から姿を消した。
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