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出水と太刀川さんと風間さんに挟まれる話。【ワートリ】

第7章 第7話


あまりにセキュリティが甘いとも思うが、それはこの三門市の特性によるものから来ていると思う。

ネイバーが侵攻してくる三門市だけど、ボーダーのおかげで出て行く住民は少ない。

少ないと言っても、入ってくるものはほとんどいないしどう考えても減っていくのが自然の摂理。

まあ、最近はボーダー入隊目的で引っ越してくる家もあるらしいけど…。

だから学校の生徒も突然いなくなるやつは普通にいるし、生徒間の関係も割と希薄だ。

一クラスの人数が減って別クラスから人数合わせで来る、なんてのもまあある。

つまり、突然クラスに知らない顔がいてもなんの不思議はないということ。

日向が堂々と生徒として監視役に抜擢されたのはそういう理由だろう。

生徒のほうが怪しまれにくいしな。

周りも大して気にしないはずだったのだが…。

「あ、えっと…伊吹怜と言います」

槍バカは割とクラスの奴と仲良くしていたからすぐ気付いたんだろう。

にしても、やけに絡むな…。

「伊吹か!俺米屋陽介、よろしくな」

「あっ…米屋くん…こちらこそ、よろしく」

槍バカの差し出した手に手を重ねる日向。

…槍バカのやつ、太刀川さんに日向と会ったら惚れるぞとか言われて会いたいっつってたけど、今目の前にいるのが日向だぞ。

それにしても、髪型とメガネと化粧でここまで人は変われるんだな。

いや、顔が違うとかっていうわけではなくて、美人なのは変わらないけど雰囲気が違うというか…。

「伊吹は引っ越してきたのか?それとも他クラスからの移動か?」

「あー…えと、移動ですね、昨日から」

「なるほどなー。前はどこのクラスにいたんだ?」

「あっ…と、それは…」

視界に俺が入ったのか、日向は俺に助けを求めるような目を一瞬向けた。

…そんな目向けられちゃ無視できないよな。

「おい槍バカ、課題うつすんじゃねーのか?」

槍バカはハッと俺に向き直ると

「やっべ忘れてた。じゃあよろしくな伊吹!」

と急いで席に座った。

つーかさっそくタメ口の呼び捨てかよ。

相手年上だぞ。

俺は日向の方を向いて「悪い」と口パクして頭を軽く下げた。

すると日向は苦笑いしながら「ありがとう」と口パクして微笑んだ。

いくらヅラやメガネで繕っても、日向の花のような笑顔はいつもと同じだった。
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