第8章 餓え
数時間前、キサラに「守って。」と言われたマルクは、彼女の事を守りながら、ウィーダと激しい戦いを繰り広げていた。
純血のヴァンパイアと混血種では体力にも大きく差が出るため、マルクはウィーダの体力を消耗させて、キサラが彼の側に寄れるようにしようと考えた。
マルク:「キサラ。君がウィーダの側に寄れるように、何とか工夫する。時間がかかるかもしれないけど、なるべくウィーダを傷つけないようにする。」
キサラ:「うん。でも無理だけはしないで。」
キサラの言葉に頷いて返事をした後に、マルクはウィーダの所へ一瞬で移動した。
移動した瞬間に彼らは宙へ浮き、口の端から覗く牙を獣のようにぎらつかせながら、お互いを威嚇するように睨み合うと、長い爪で切り裂くかのようにウィーダがマルクを切りつけた。
飛ぶように激しくウィーダは攻撃をし、マルクは彼の攻撃を受け流し続けた。
マルクが一瞬油断した、その時だった。
マルク:「っ!?キサラっ!!」
自分へ攻撃をし続けていたウィーダは、突然キサラへと標的を合わせた。
マルクが移動する速さよりも先に、キサラが動いた。
キィィィンッ!
っと耳に響く高い音と共に部屋が真っ白になった。
真っ白な世界で何も見えないマルクは「キサラっ?!どこにいるっ?!」と大きな声で声を掛けたが、返事はなかった。
マルク:「……っクソ!どうすれば……!」
下手に動けば命取りになると思い、動かずに周りを見渡して居ると、次第に視界が開けてきた。
すると、視線の先にはキサラとウィーダが居た。
直ぐに二人の元へと移動すると、マルクは二人を見て言葉をなくした。