第8章 餓え
ガイタスに手を引かれるままキサラ達は城の中を駆けて行くが、
日の光が差し込まないようにカーテンが閉じてあり、真っ暗だった。
キサラ:「きゃあっ?!」
キサラのパンプスのつま先が大理石でできた床に引っ掛かり、転びそうになった時だった。
マルク:「……大丈夫?」
後ろにいたマルクが転びそうになったキサラを抱きしめるように支えていた。
ガイタス:「すまない!怪我はないか?」
キサラ:「大丈夫!私の方こそ足が遅くってごめんなさい。ただでさえ足手まといになっているのに、後れを出してしまって。」
キサラがマルクとガイタスに申し訳なさそうに謝ると、マルクが引き締まった表情でガイタスの方に視線を向けた。
マルク:「急ぐのは分かるが、気の早まりは死に繋がる。僕たちはヴァンパイアで体力も身体能力も高いが、人間はそうじゃない。少し彼女のことも考えて行動してくれ。」
淡々と話す彼にキサラはずっと抱きしめられているのを思い出し、顔が紅潮していく。
それに気付いたガイタスが口を開いた。
ガイタス:「すまなかった。俺は我を忘れかけるかもしれないからここから先はマルクがキサラの手を引いてやってくれ。」
マルク:「分かった。」
ガイタス:「それから。そろそろキサラを抱きしめたままでいると、キサラが倒れるぞ。」
ガイタスに注意されたことでマルクはハッとして急いでキサラから離れた。
マルク:「す、すまない……。手を離すのをすっかり忘れていた。」
困ったような照れたような顔で謝るマルクにキサラは「大丈夫よ」と目を逸らしながら言った。
ガイタスに「そろそろ部屋に着く。急ごう。」と施され、本来の目的を思い出し、3人は城内を走り出した。