第8章 餓え
マルク:「それは……」
マルクが口を開きかけた時だった。
バンッ!!と大きな音を立てて慌てた様子でマルクの仲間の男性が入ってきた。
マルク:「ガイタス?何を慌てて……。」
ガイタス:「マルク、大変なんだ!ウィーダがっ!」
マルク:「ウィーダがどうしたんだ。」
強張った表情でマルクがガイタスに問いかけた。
マルクの隣にいたイリアはハッとした表情をして部屋を飛ぶような速さで駆け抜けていった。
マルク:「イリアッ……?!」
ガイタス:「ウィーダが餓えているんだ。このままでは城も破壊される。イリアも攻撃されかねない。今どうにかしなければ、皆危険な状態になる。」
マルク:「……。急いでウィーダのところへ行こう。」
ガイタス:「どうするつもりだ?」
マルク:「力づくでも、抑えて見せる。仲間や、人間に手を掛けることは許さない。」
そう言うとマルクはキサラの方へと視線を向ける。
キサラも自然とマルクと視線が絡む。
燃えるような紅い色へと変わるマルクの目は、今ここにある命を守ろうと必死になっていた。
キサラ:「…私も一緒に行かせて。力になれるかもしれない。」
キサラの言葉を聞いて、ガイタスは怒りだした。
ガイタス:「一緒に行けるわけがないだろう!例えアルーダ様の血族だと言っても、人間には変わりがない!餓えているヴァンパイアの目の前に出るなど自殺行為だ!
マルクも同行できないと言うんだ!」
マルク:「連れて行く。」
ガイタス:「なっ……!正気か?!」
マルク:「あぁ。彼女ならウィーダを助けてくれるだろう。そう思った。安心しろ。必ず彼女のことは僕が守る。」
そう言うとガイタスは目を閉じて気持ちを落ち着かせた後、キサラへと手を差し出した。
ガイタス:「……行こう。急ぐぞ。」
キサラ:「ありがとう。私を信じてくれて。」