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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第18章 奏でるモノクローム



『…もう。ほんと意地悪』

「零に意地悪が言えるのも、幼馴染の特権だから」

『なにそれっ!』

「エレベーター、行っちゃうよ。それとも、次にエレベーターが来るまで百さんに告白し続ける?」

『な…っ!馬鹿じゃないの!!するわけないでしょっ!!』

「じゃあ聞かせてよ、ちゃんと。キミの口から」

『はあ…。……。……好き…だよ。百が好き。…これでいい!?』

「ふふ。…うん、よくできました」




―――だから。

そのほんの少し片隅に―――ボクの事を。




顔を赤らめながら、慌ててエレベーターに乗ろうとする零の腕を、ぐいっと引いて。
バランスを崩した零の体を、後ろから抱き締めた。


『ちょっと…天!?』

「………」

『なっ何してるの…!?』

「エネルギーの補充。これも、幼馴染の特権でしょう」

『……なら、私が天にするべきじゃない?私の方が、お姉ちゃんなんだからさ』

「…そうだね。じゃあ、次からは零がして」

『いいよ…。でも…恥ずかしいから、元気がないときだけだからね』

「はいはい」


――零の髪の毛からは、昔とは少し違う、大人っぽいシャンプーの匂いがした。
それが余計に、昔と今は違うんだって、思い知らされてる気がして。なんだか、少し寂しくて。


『……エレベーター、行っちゃったじゃん』

「すぐ来るよ」

『……そうだね』

「早く来てほしい?」

『……別に』

「顔、赤いよ。ボクは家族なんでしょう?」

『…うるさいなっ!からかわないで!もう、本当意地悪!』

「二人きりになれる時くらい、甘えさせてよ」

『…甘えちゃだめなんて、言ってないでしょ。…天が、望むなら――』


そのとき、もう一度、エレベーターの来る音が静かな廊下に響いた。
名残惜しさを残すように、零の体をそっと解放すれば。

零は頬を赤らめながら、瞳を潤ませながら。
ボクを見上げて、言ったんだ。


『いつだって、側にいるよ…。いつだって……甘えさせてあげるんだから。ずっとそうしたかった。天と離れてから五年……ずっと、ずっと…寂しかったんだからね…』

「……。……ごめん」

『……いいよ。これからは、ずっとそうするから。……消えろって言われたって、離れてなんかやらないんだから』
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