第12章 過去
*明希視点
〖ごめんな。こんな俺を好きでいてくれてありがとう〗
"ううん。僕の方こそありがとう。またこうやって声が聞けて嬉しかった"
死んだ人を忘れるのは声からって言うのは本当だった。そうじゃなかったら、最初の一声で分かってた筈だから。
〖もうすぐで明希はここから出られる。その前に、小南や迅達と話をさせて欲しい〗
"うん、いいよ。みんなも進さんと話がしたいだろうし、僕だけって言うのはズルいもん"
〖ありがとう〗
♢♢
*迅視点
明希が眠って2週間目。
今朝、小南の未来で明希が目覚めるのが見えた。明日の、恐らく午前中には目覚める。
やっと、やっと会える。この2週間、モニターでもピクリともしなかった明希がやっと目覚める。みんなに知らせなくちゃ…!
急いで全員に集合してもらい、明日の午前中に明希が目覚める事を伝えると、みんな一斉に喜びの声を挙げた。
明希がボーダーに復帰したらみんなに詰め寄られる未来が見えるけど、いろんな人を心配させて待たせたんだ。これくらいは甘んじて受け入れてもらわないとな。それに、俺だって待たされた内の1人だ。構い倒して構い倒して、嫌になるまで構い倒してやる。
覚悟してろよ、明希。
♢♢
*風間視点
数日前の諏訪からの電話で、俺も藤咲探しを手伝っている。確かに最近本部で見かけないとは思っていたが、まさか17歳組や18歳組まで探しに出る程とは思わなかった。しかも、二宮や太刀川まで。まぁ、この2人は戦いたいだけなんだろうが。
...そう言えば、シフト表にも藤咲の名が入っていなかった。という事は、城戸司令や忍田本部長はこの件について知っている事になる。それに、さっきそこで会った三輪によると、影浦と村上のSEが機能していないらしい。しかも本部にいる時だけ。それも関係があるのでは?と言う考えのようだが、それには俺も同意だ。藤咲のトリオンがボーダー内でも圧倒的に多いのは周知の事実だ。そんな奴にSEの妨害をするSEがあってもおかしくはない。それに、菊池原の耳の調子も良くない。目覚めたらどういう事か聞こう。
風「.....?」
最近変な気配を感じる。それこそ藤咲がいなくなった頃から。菊池原同様、本部にいる時だけなのが不思議だが...。まぁいい。考えても仕方が無い、今は藤咲を探すのに集中しよう。