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飛行機雲 【暗殺教室】

第2章 はじめての時間


 中間テストを前日に控えた今日、先生はクラス全員を校庭へ呼び出した。私たちを叱咤し、警告した。第二の刃を示せと。示せなければ先生は校舎を平にして去ると言っていた。
 先生はどうして先生しているのか知らないけど、今までどこかに行ってしまうなんて考えには至らなかった。自然と最期の日までこの教室に居てくれるんだとばかり思っていた。

 ――第二の刃。

 先生という拠り所が無くなった時、この世界を生き抜くための刃。私にとってはそれは刃というよりも、この大空をはばたくための羽って感じ。
 先生は明日のテストでクラス全員五十番以内に入ることを、刃を示す条件とした。
 先生の授業は一人で勉強していた頃よりも断然解りやすく楽しくて、五十番以内に入ることはそう難しいことではないと思うけど、E組に来てからもう勉強なんていいやって投げやりになっていた部分もあるから、気が揉めた。
 家に帰る前に、自身を奮い立たせようと先生の元を訪れた。
 先生は花壇に水やりをしている。私の気配を察知すると、くるりと振り返った。
「そうだはともりさん。先生ずっと気になっていたんですがカルマくんが停学明けしたあの日、なにか言いかけましたよね?」
「ちょうどね、それを言いに来たの」
 気持ちが重なったような気がして嬉しかった。
「明日のテストでいい点取れたら、一つだけ私のお願い聞いて」
「ヌルフフフ。それは百点ということですか?」
 私は頷いて、続けた。
「椚ヶ丘のテストってけっこー難しいんだよ」
 本当はあの日の六時間目の小テストで百点をとれたら願いを聞いてもらうつもりだったけど、ハードルが上がってしまった。
「ええいいでしょう。先生に出来ることならなんでもきいてあげます」
「約束だからね! じゃあ、また明日」
 願いは既に決まっている。
 私は早く勉強しなくちゃと、帰りたくない家へ急いだ。
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