第23章 和かな軍議
そこから真っ直ぐに陣形の中央部に補給班や医療班などの、非戦闘班が並ぶ。
左右の翼は索敵班と攻撃班で構成され、攻撃班は回避不可能な場合と奇行種の接近遭遇時のみ戦う。
「凄いね!ほぼ完璧じゃないか!」
今までの多くの犠牲があってこその成果。それがこの長距離索敵型陣形の完成だ。
ハンジは眼鏡が曇る程に興奮しているし、エルヴィンの説明を聞いていた他の隊長達の表情も明るい。
これまでの攻撃こそ全て、というやり方ではなく、極力巨人との接近遭遇を避けるやり方だ。
『でもこれ、左右の翼の外側はかなりキツイよね?』
「だから君を戻すんだ。」
『へ?』
エルヴィンはそう言うと、左翼側の攻撃班の要はアゲハだと言った。
まさかこんなにもすぐに事が運ぶとは思ってもいなかったのだろう、言われた本人はイマイチ話が伝わっていない様子。
大きな目をパチパチとさせている。
「右翼側の攻撃隊はミケに、左翼側の攻撃隊はアゲハに。索敵隊はナナバとゲルガーに任せるつもりだ。」
団長、兵士長、攻撃隊長が二人に索敵隊長が二人。補給班長に医療班長、そして研究調査班長。
その新しい調査兵団の幹部達にここに集まって貰っているんだ、とエルヴィンは言った。
ミケには兵士長と攻撃隊長を兼任してもらう事になるが、とエルヴィンは彼へと視線を向ける。
「アゲハが戻るなら問題ない。むしろ兵士長も彼女にやらせるべきだ。」
『は?』
「いいんじゃない?アゲハは人気者だし。」
「確かに。一理ありますね。」
当の本人だけが話題についていけずにアタフタとしている。
その様子を楽しそうに見ていたエルヴィンに助けを求めるようにアゲハは言った。
『待ってよ、急過ぎてついていけない!』
「団長補佐からは降格したようになってしまうが、どうだろう。私の考える作戦は君の指導方針から影響を受けているところもある。」
出来ない事をやらせない、出来ることを完璧にやらせる。
それがかつて彼女の第三部隊を強くしたやり方だった。
「いーんじゃない?この際。ミケと二人でやれば?」
「攻撃隊長が兵士長っていうのは、当然の流れでしょう。」
満場一致だな、とエルヴィンは笑った。
こんなにこやかな壁外調査軍議が今まであっただろか。