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名の無い関係

第23章 和かな軍議


重い扉が開き切る前から内地に飛び込むように帰還してきた仲間達に、アゲハの命令で待機して居たナナバ達の表情に安堵の色が染まる。


『リヴァイ!』


返り血に染まったリヴァイが廃墟の屋根に着地した。
きっともう彼のガスの残量は少ない。


「ッチ。またアンタかよ。」

『後は任せて。もう殆どないんでしょ。』


アゲハはそう言うとリヴァイの腰に備わるガスボンベを指差した。
リヴァイは諦めたように小さな溜息を吐くと指笛を吹こうとして、その手が汚れている事に気が付き静止してしまった。
なぜ彼が止まったのか直ぐに理由がわかったアゲハは、綺麗なハンカチをクスクスと笑いながら差し出した。
思っていた以上にシガンシナ区の扉からかつての内地に侵入してきている巨人の数は多かった。
いや、多かった、なんて簡単な言葉で済ませる数ではなかった。
たった一箇所の小さな綻びから数年で入り込んだとは思えない程だ。


「もし仮に侵入してきてる巨人が全部こっちに向かっていて、散らばっているわけではないとしたら。」

「…そうだとしても想像以上だ。」


トロスト区を出て確認出来たのは僅か数箇所の集落跡だけ。
それだけだったというのに、今回の調査でも仲間がだいぶ犠牲になってしまった。


『今後は駐屯兵団との共同作戦もありえる、って成果だけだね。』

「それについてはアゲハ、よくやってくれたよ。」


近いうちにピクシス指令に正式に今回の礼をしなくちゃいけないな、とエルヴィンは笑った。
壁外調査あとの軍議で笑いが出るなんて初めてのことかもしれない。
それにアゲハがちゃんとこの場に出席している事も珍しい。


『それはどうせまた、私の仕事なんでしょう。』

「そう嫌な顔をしないでくれ。君だから頼めるんだから。」


エルヴィンの甘ったるい言い方に、満更でもない表情を浮かべたアゲハを見て緊迫していた空気が変わる。


「イチャイチャは後でゆっくりしなよ。」


ハンジに冷やかされ、アゲハは気まずそうに視線を反らした。


「では次はこれについてだが。」


机に大きく広げられた陣形図は翼を大きく広げた鳥の絵のよう。
嘴にあたる位置に団長のエルヴィン、そこに随走するのがハンジ率いる研究調査班。
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