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名の無い関係

第22章 共同作戦


太陽が容赦なく照り付ける真夏。
トロスト区の壁上砲台は休む事なく撃ち続けられていた。
街には轟音が鳴り響き、いつもなら街を行き交う人々で賑わう場所には進軍の号令がかかるのを待つ調査兵団の兵士達がいた。
街の人々は皆、建物の中に避難している。


『素晴らしい火力ですね、これなら私達の出番はありませんよ。』


舞い上がる土煙と巨人の絶命の証の蒸気で地面が見えない。
初の試みの為、最悪に備え今回はピクシス司令官が直々に駐屯兵団の指揮をとっていた。
その隣には自由の翼の紋章を背負ったマントを羽織る数人の兵士達。


「そうはいくまいよ、これで倒せるのは壁に寄ってくる奴等だけ。いざ扉を開き奇行種がいたら君達に頼るしかない。」


数日前から無人リフトを使用し、予備の軍馬や補給物資を積んだ無人の馬車がマリア内地に降ろされた。
この計画をピクシスが承認してから三ヶ月。
一番苦労したのは軍馬達が勝手に移動しないように訓練する事だった。
補給物資を積んだまま、どこかに行かれてしまっては意味がない。
それに本体の進軍について動けなくても同じ事。


『それはご心配なく。本体が無事にここを出て無人の荷馬車を取り込むまでの護衛が私達の仕事ですから。』


トロスト区からマリア内地までは、幸い人工の建築物が多く立体起動装置を使用するにはもってこいだ。
元はトロスト区へ入る前の宿場町。
壁上から目視できる限りでは奇行種は居ない。どの巨人も壁際に集まってきては砲撃の雨に撃たれている。


「後援に君が残るとはちと意外だったなぁ。」

『そうですか?』


本隊が無事に扉を抜けるまでの護衛役。
アゲハが隊長を務める調査兵団後援部隊。
部隊と言っても人数は僅か5名。
数が多ければよいというわけでもないが、それにしても少な過ぎる様に思える。


「君はかなりの腕だと聞いている。確実に戦力になる兵を置いて行くとは、また大胆な策をとったもんだな、エルヴィン君は。」

『私はここ数ヶ月、彼等と同じ訓練はしていなかったので。突然入ったんでは連携も難しくなりますからね。』


だから今回はこの後援部隊がちょうどよかったのだとアゲハは言った。
それに、初の駐屯兵団との共同作戦。
今後の壁外調査の為にも絶対に失敗は許されない。
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