第22章 共同作戦
王都から戻ってからアゲハは忙しい日々を過ごしていた。
マリア陥落後、初の壁外調査が間近に迫っており、駐屯兵団へ扉の開閉協力の為にピクシス司令の元へ詰めていたのだ。
「またアイツに妙な事をさせてるのか?」
王都から戻ってすぐに壁外調査の日取りが決まったと兵団内に公示された。
いつかは調査に出るとわかっていたが、知らされた日取りがあまりにも近く、兵達の間に妙な噂が湧いた。
エルヴィン団長はアゲハをパトロンの貴族に売って資金を得た、と。そんな噂が湧いてくる程に、アゲハの姿を兵団内で見る事が減っていた。
その噂は勿論、エルヴィン本人にもリヴァイにも聞こえていた。
「また、とは人聞きが悪いな。」
「堂々と言えねぇ事もやらせてんだろ?」
「そんなつもりはないがね。」
彼女は今、駐屯兵団に行っているよとエルヴィンは本心の読めない笑みを浮かべた。
仮にも上官、まして自分の所属する兵団の団長の執務室だと言うのに、リヴァイは足を組んで我が物顔でカウチに座った。
「駐屯兵団?」
「あぁ。次の調査には駐屯兵団(かれら)の協力は必要不可欠だからね。」
「どういう事だ?」
扉の開閉協力として、壁を死守する為に配置されている壁上砲台を使用する初の共同作戦。
駐屯兵団側から出された協力するに対する条件に調査兵団からもしもの対応をする部隊を残す事だった。
その部隊調整や最悪の事態になった場合、駐屯兵団の兵力がどのぐらい戦えるのかを建前なく話し合わなければならない。
「出立時の防衛の要が彼女なんだ。」
「ちょ!アイツを置いて出るのか?」
「あぁ。今回の調査にアゲハは出ない。もしもの時に備え戦力を別ける。」
「別けるって。」
「お前は外から、彼女は中から。」
エルヴィンはそう言うと机に広げていた作戦図をトントンと指差した。
そこには数日後に迫った壁外調査の作戦図があり、本隊の特別作戦班にリヴァイの名前が書かれていた。
それは今までは彼女が率いていた部隊。本隊が帰還する最後の時まで戦う。
「俺に殿をやれと?」
「彼女が自分の代わりはお前しかいない、と。」
いつの間にそんな話をしてやがった、とリヴァイは小さく舌打ちをした。
「そう嫌そうな顔をするなよ。」
エルヴィンはそう言うと何故かとても楽しそうに笑った。