第3章 始まり
「失礼しマース」
体育館の扉を開けて中へ入る
月島くんは持っていたドリンク
のカゴを入口の脇に置いてシュ
ーズを履く
『月島くん!運んでくれてありがとう』
月島くんの元に行ってお礼を言うと
プイとそっぽを向かれてしまった
「別に」
キュッと靴紐を結いてアップを取ろう
と立ち上がった月島くんの前に田中さ
んが仁王立ちで立っていた
月島くんはギョッとしている
「おうおう月島くんよ。どうしてせりあさんと一緒に体育館入って来たんですか?コラ」
「別に田中さんには関係ないですよね」
「うぐっ···!?」
「僕、アップとるんで失礼しマース」
ダメージを受けて固まっている田中さん
の横を笑顔で通り過ぎる月島くん
『大丈夫ですか?』
月島くんが通り過ぎた後、床に膝を着い
て固まっている田中さんに声をかけると
まるで水を得た魚のように生き生きとし
た表情になった
「せ、せりあさんっ!なんてお優しい!!その優しさは最早女神···ぐっ!!?
「た~な~か~」
本日2回目の澤村さんの拳が田中さんの
頭へとヒットする
さっきも思ったけど、痛そう・・・
「いつまでも遊んでないで!さっさと練習!」
「ウス!!!」
澤村さんに連れられて田中さんは練習へ
と戻って行った
1人になった私は練習風景を見てふとあ
ることに気づいた
さっきまでいた2人の姿が見当たらない。
きょろきょろと辺りを見回して見るも、
視界に入るのはトスを上げる菅原さんと
そのトスを打つ田中さん、田中さんの打
ったスパイクをレシーブする澤村さんの
他、アップをとっている月島くんと2年
生の方達だけだ。
「妃さんゴメンね。ドリンク重かったよね」
澤村さんのドリンクを片手に持って側に
やってきた清水さんに聞いてみた
『いえ。月島くんが手伝ってくれたので···。それより清水さん、日向くんと影山くんはどこに?』
「ん、ああ。妃さんにドリンク作ってもらっている間にちょっと色々あってね。澤村が体育館出禁にしちゃって」
『へぇ·····って、えっ、出禁っ?!』
何をどうしたら体育館を出禁になるの
だろうか
「大丈夫。澤村にもちゃんと考えがあると思うから」
澤村さんのドリンクをカゴにしまって
清水さんはボール出しの為にコートへ
入って行った