第3章 出会い2
「私は、橘 咲夜と言います。」
(自己紹介されたなら、返すのが普通だよね。)
ぺこりと頭を下げた。
「...あの、もしかして、」
「?はい。」
「...あなたは女性ですか?」
(っ...!)
こんな外見のせいで間違えられてきた私の性別。
それを、この人は見破ってくれた。
(...まあ、『私』って一人称使ってるからだろうな。...分かってもらおう、なんて思ってないから別にいいけど。)
そういうことは随分昔に諦めた。
「...ええ。そうです。」
私がそう答えると、やっぱり、という顔をされた。
「ところで、これからのことですが...、」
しかし、そこで。
パカラッ、パカラッ!
「「!」」
もう聞き慣れた馬の駆けてくる音。
「...そろそろ俺も行かないと。」
「え?」
(えっと、私は放置ですか?)
急に不安になる。
「すみません、あなたを連れていきたいのはやまやまなんですが。俺の上司は女嫌いで。」
(『女嫌い』って...。あ、あの『謙信様』って呼ばれてたオッドアイの男性かな?)