第5章 近づく心
シャワーでさっと体の汗を流したアイリーンは、リヴァイから渡されていたふわふわのタオルをぎゅっと顔に押し付けた。
ふんわり香る、木の香り。
箪笥の香りと混じって、少しだけ甘い香りもする。
その香りにアイリーンは少し頬を染めた。
暖かいシャワーだけではない、その体の熱さにむずむずして
アイリーンはガシガシと乱雑に髪の毛を拭き始める。
…リヴァイさんがいつも使っている、シャワー室。
そう思っただけで、とてつもなく恥ずかしくなって、凄く雑な洗い方しか出来なかった。
男性の部屋というだけで心拍はあがるのに、そこで裸になってシャワーまで借りて…。
頭がぼうっとして、鼻血でも出そうな程顔が熱くなってしまう。
そんな卑猥な考えをなんとか振り払おうと、タオルで雑に体も拭いて、シャツに袖を通す。
「…うわ、だめだこれ………」
思わず漏れた言葉。
それは鏡に映る、少しぶかぶかの服を着た自分に向けられていた。
丈が長い服を選んでくれたのか、シャツは膝の近くまで伸びている。
露出は控えめにはなっているものの、そのあまりの無防備な恰好にアイリーンは頭を抱えた。
こんな姿で、リヴァイさんの前に出ていく勇気………
そんなもの持ち合わせていないです…!!
恥ずかしくて心臓が持たない自信さえ湧いてくる!
こんな姿を晒すくらいなら、全力で土下座でもして部屋に帰らせてもらおうか。
いや、その前に元の服に着替えて土下座しないと意味がないかも………
アイリーンの頭は、どうやってこの窮地を脱するか。
その事でいっぱいで、コンコン。とノックされる扉に気づけずにいた。