第5章 近づく心
「おい。」
「………ッゲホ、ゲホッ!」
突然開いたドアから聞こえた、聞きなれた低い声。
体一杯にリヴァイの部屋の空気を吸い込んでいたアイリーンは、突然声を掛けられ、思いっきり咽てしまう。
少し涙目になりながら、ドアから部屋へと入ってきたリヴァイを見上げる。
リヴァイはどこか訝し気な顔をして、大丈夫か?と声を掛けてきた。
「だ、大丈夫です…。すいません」
せき込みすぎて目尻に溜まった涙を拭きながら答えると、リヴァイは不思議そうな顔のまま、カップをアイリーンに手渡す。
中を覗くと、それは普通の飲料水のようだ。
「走り込みで疲れただろう。それでも飲め。」
「あ、ありがとうございます。」
てっきりまた紅茶かと思っていたアイリーンは、ただの水に少しホッとしていた。
甘い紅茶は大好きだが、今の状態で飲むには少しキツイかな。なんて贅沢な事を考えていたのだ。
頂いたコップの中身を一気に飲み干す。
冷たく冷やされた水は、体の火照りを冷やしてくれてアイリーンは飲み終わるとホッと息を吐いた。
美味しそうに水を飲み干したアイリーンをリヴァイは満足そうに見やると、今度は棚を漁り始める。
アイリーンは不思議そうにリヴァイを見ながら、飲み終えたコップを机に置いた。
「……これしかないが、まぁいいか。」
何かを探り当てたのか、リヴァイがそう声を漏らす。
なんのことだろうとコップからリヴァイへと目線を移すと、そこには真っ白いふわふわのタオルと
少し丈の長めのTシャツを持ってこちらを見るリヴァイの姿があった。