第5章 近づく心
なんだかここに来るまで、ずっとドキドキしていた。
走り込みをしてどきどきしていたし、リヴァイが現れた時もドキドキしていた。
そのあとに手を繋がれたことにもドキドキして、目的地に着くまでの間に何人もの兵士に目撃されたことにも、ドキドキした。
リヴァイの部屋へ行くと分かった時も、着いてからリヴァイと離れた時も。
ずっと、心臓は煩く高鳴っていた。
「………もう、心臓が壊れそう。」
はぁ…と大きく息を吐いて、心を落ち着かせる。
それと同時に、鼻にふわりと良い香りが掠める。
清潔さを象徴する、アルコールの独特の香りと
リヴァイが好んで飲んでいるのであろう、紅茶の甘い香り。
それからもう一つ。
「…リヴァイさんの、香りがする……」
何度か抱きしめられた時に、ふわりと香っていたリヴァイの体の香りが、この部屋にはあった。
甘くて、すっとする。
リヴァイだけの香り。
前に来た時は、そんな事考えもしなかったし
考える余裕もなかった。
けれど今ならわかる。
この香りは、アイリーンの好きな香りだ。