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好きなだけじゃダメなのか

第4章 疑惑


重臣たちがどよめく中、父は
顔色一つ変えず問うた。

「なぜだ?」
「ラビル様との婚姻が嫌で
逃げ出したときに、鷹狩りに
来ていらっしゃったようで」
「これは何だ?」

ぺらりと父が懐から出したのは、
薔薇と菖蒲と黒い紐。

「お前宛の文の中に入っておったが
心当たりは?」
「ございません」
「薔薇はお前の証印だろう」
「あちらの王妃の証印でもあります」
「ではこの黒い紐は?」
「さぁ」
「薔薇と菖蒲が結ばれていたが…」
「存じ上げませぬ」

父はゆっくりと脚を組み、笑った。

「ハビル」
「はっ!」

名を呼ばれたハビル様が驚いた顔で
返事をする。

「こいつを反逆罪で捕らえよ」
「な…」

ハビル様が青ざめる。
大将軍は組んだ脚に頬杖をついた。

「畏れながら申し上げます、陛下」
「早く捕らえよ」
「陛下」
「捕らえよ!そなたも牢屋送りに
してやろうか?」

父の目に気圧されたのか、はたまた
牢屋送りにされたくなかったのか。
ハビル様は苦しそうな顔で私を縄で
縛った。

「姫…」
「大丈夫」

緩めに結ばれた縄が、彼の優しさを
物語っている。

「必ずまたここに戻ってくる!
それまで精々生きておれ、王よ!」

近衛軍の兵士に引き渡される。

「戻ってこれるわけがなかろう」
「いいや。戻ってくるさ」
「ほざけ馬鹿娘」

父に唾を吐き、兵士に連れられて
牢へ向かう私を、誰かが見ていた。
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