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神様の悪戯

第3章 不幸少女


黒川さんは本当にドリンクバーの仕組みを知らなかった。

「なんだこれ…。」

いつも飄々としている黒川さんが戸惑っている姿は少し面白かった。

「なに飲むの?」

「コーヒー。」

「ホット?アイス?」

「ホット。」

私はホットドリンク用のカップをコーヒーメーカーにセットしてあげた。

「あとは、ここのボタン押すだけ。」

黒川さんは私が言った通りにボタンを押した。
当たり前だがカップにコーヒーが注がれる。
それを物珍しそうに見つめる黒川さん。

「これ、いつ止まるの?」

「ちゃんとちょうど良い量で止まるから大丈夫だよ。」

黒川さんは新しい玩具を与えられた子どもの様に目を輝かせていた。

この人もこういう顔するんだ…少しだけ、親近感がわいた。

席に戻った黒川さんは少し機嫌が良かった。

「ドリンクバーって面白いな。」

「私からしたら黒川さんが面白いよ。」

そこに、ハンバーグ定食が届いた。

「いただきまーす。」

私が食事をしている間、黒川さんはずっと煙草を吸っていた。

「黒川さん、1日にどれくらい煙草吸うの?」

「2箱くらい。」

「2箱?早死にするよ?」

「別に長生きしたくねぇし。」

いつもの黒川さんならふざけた口調で言いそうな言葉を真剣な口調で言うから、少し心配になった。

「そんな寂しいこと言わないでよ。」

それに対して黒川さんは何も言わなかった。

私が黙々と食べ続けていると、黒川さんが言った。

「で。うち来るの?来ねぇの?」

私はしばし考えた。

黒川さんは確かに怪しい。
自分のことをあまり話さないし、時々目付きや笑い方は怖いし。

でも、思い返せばいつも私がピンチの時は助けてくれた。
今もそうだ。

でも、それだけで信用していいのだろうか…。

ひなこの件もあり、人間不信に拍車がかかった気がする。

「黒川さんは…知り合いの女性と私が似てるからいつも助けてくれるの?」

そう問いかけると、一瞬黒川さんの瞳に悲しみが宿ったのを私は見逃さなかった。
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