第16章 脱出?
〈時間がないよ。朝倉は此処にいる人間を全て自分の物にしてくるわ〉
仁「なんじゃと...」
〈急いで、精市が人間で無くなる前に〉
仁「じゃが」
〈ためらっている暇はない。私の血には力が普段から込められている。蓮二に借りたペンよりも力を発揮するわ〉
仁「くっ!」
俺は手に持っておる6枚の札に
氷月の血で文字を綴る
出来上がった札を持って相手に1枚1枚投げつける
右肩、左足、両脇腹に頭と胸
氷月を見れば先程の白い人魂はおらんかった
仁「氷月?」
呼んでも俺には答えてくれんかった
代わりに朝倉がこちらに振り返り、俺に向かって飛んできた
仁「なっ!」
俺は間一髪の所で避けると朝倉は壁に当たる寸前で止まり
俺達に敵意を向けて歩いて来る
俺はすぐに皆の所へ戻った
柳生「氷月さんは?」
仁「息はしておる」
朝倉が俺達から離れた時に脇腹に深く刺さる物を見て言ったんじゃろう
氷月の隣を歩き、俺達に迫ってくる
氷月、お前さんの言う事を実行したんじゃ
次はどうするんじゃ?
教えてくれっ!
?「次は、こうします...」
朝「ぐはっ...」
酷く掠れた声は俺達の前から聞こえておった
朝倉はグラリと体を傾けてそのままうつ伏せに倒れた
朝倉の向こうには同じくうつ伏せになりながらも腕で上体を起こしている氷月の姿が
そして、氷月は左で何か投げた仕草を残しながら相手を睨む
朝倉の背中、左肩甲骨辺りには
氷月の脇腹に刺さって居ったナイフが深々と刺さって居る
『ソイツは亡霊だ。此処の七不思議の頂点であり、人から道を誤った。ソイツの本体は現実世界で死んでいるよ』
右目を閉じ左目だけで俺達を見る
次に氷月は自身で作り上げた赤い血に左を浸して文字を書く
その文字は先程と同じように俺達には読めない文字じゃった
サラサラと書くその左の指先は最後にその文字を円で囲った
真っ白だったパーカーは既に半分以上が染められておった
『......』
氷月は小さく何かを呟くと、札がそれに共鳴してか
文字が赤くなる
朝「あがっ!何、をっ!!」
自身に何が起きておるのか分からない朝倉はよろめきながらも立ち上がり
氷月に向かっていく