第15章 最後の決戦
朝倉の後ろには赤い水溜りが2ヶ所程出来ておった
水島「氷月っ!」
悲痛な声で奈々は叫ぶ
じゃが、此処から見える氷月の手は指一本動かんかった
朝「今さっき落ちた所だよ。絶望と虚無の世界にね」
右手には糸から垂れ下がった5円玉が見える
柳「催眠術か」
朝「正解よ。意外と賢いのね君、うーん欲しくなっちゃったかも」
朝倉の表情は言うまでもなく歪んで居る
口の両端は釣り上げられ、目には俺達を1人1人映しておる
朝「でも、私が最初に欲しいのは、君だよ銀髪君」
「「!!」」
朝「君の言葉が彼女の邪魔をしてね、今は一時的に落ちているんだよ。そして今はただ眠っているだけなんだけど。君をこっちに引きずりこめば彼女も大人しく付いて来るのにね」
仁「生憎じゃが、お前さんに遊ばれるような俺じゃないぜよ」
朝「粋がっているのも体外にして頂戴、此処に踏み入れた時からあなた達の運命は決まったのも同然。此処で死ぬか、私の玩具になるだけよ」
幸「それ、元を返せば「死ぬ」んじゃないかな?」
朝「まあ、そうとも言うかもね」
そう言った朝倉の表情は先程よりも歪み
俺達に近づいて来る
朝倉は俺達に近づいて来ると幸村はすかさず札を投げた
投げた札には先程と同じような文字が綴られており
朝倉の右腕に貼りついたが
当の本人は気にしない素振りで近づいて来る
幸村はいつの間に書いておったのか
2枚3枚と相手に投げつける
左腕、右足、左肩、腹に背中
幸「なくなっちゃった」
札を投げつけられたのが段々気に食わんのか朝倉は幸村をターゲットにした
俺はすかさず朝倉の隣をすり抜けて氷月の元へと向かう
仁「氷月...!」
朝倉に聞こえないように小さく呟く
右腕から小さな水溜りが、左脇腹には大きな水溜りと突起物が刺さって居る
口元に手を当てると、短く浅い少しだけ生温い息が伝わってくる
〈私の血で文字を書いて〉
仁「!」
頭に直接響く声
氷月の胸の上には白色の人魂がおる
〈越前君か海堂君に言われたでしょう?それを実行して〉
仁「じゃが」
〈時間がない。それは私の命だけでなく精市も〉
仁「!」
幸村の方を見れば朝倉はドンドン迫って行く
幸村は表情こそ変えないものの焦って居るようじゃ