第5章 私は幼馴染みとキスをしました
「明日以降も俺と忍足さんはダブルス固定にします?」
私は真田さんに尋ねた
別にそんなこと明日以降決めればいいんだけど
実は立海にいた時は男子テニス部とは殆ど交流がなかった
この姿になって色んな人と関わりを持つ度に、私は知らない世界を知ることができた
元々社交的だとは言われるがそれ以上にもっと
私のいる世界を知りたい
自分の考えにふけっていると概ね予想通りの返答がくる
真田「今日の練習試合を見てみないとな。お前を一番よく知らないのだ。他は公式試合を見たことがあるんだが…」
チラッと私を見るとまた、顔を前に戻した
彼は私の正体に気づいていないのだろう
ただ、純粋にチームメイトとして知ろうとしている
「あー、公式試合出てないんすよ。怪我してたんで。」
男子としての私の記録はない
公式試合に一度も出ていないからだ
都大会のレギュラー決めの時なんて酷かった
同じブロックに大石先輩と不二先輩がいたのだ
無理だとは思っていなかったが
接戦の末、私はレギュラー落ちした
そして関東大会でのレギュラー決めのアレ
ツイてないのか、はたまた力量不足か
真田「勿体無いな」
「え?」
私は真田先輩の一言に小首を傾げた
真田「いや、ここにいるということは全国大会に出るのだろう?公式試合の経験がないのならば、本領発揮できるか心配でな」
オトンかあんたは
私は笑いを堪えられず、ははっと笑ってしまう
「イップスにならないように頑張ります」
そう言うと自分の施設の中へと入る
真田「(彼は強くなる)」
敵に塩を送るような自分の発言に自分自身が驚いたものの
彼に多少の愛着を持ち、強くしたいと思う気持ちが生まれていた
そんな真田先輩の心情なんて知るはずもなく
食堂の扉を開いたのだった