第2章 7年前。
「あっ…」
ガーゼと消毒液を手にたっている静雄さんを見て本当に家近くだったんだ、と少し場違いなことを考える。
「高校生…?」
「ヤバイよねチクったのかな、ありえない。
」
「えー私たち、愛実ちゃんの友達ですよ~?」
「今教科書隠したようなこと話してたよな?」
きっ、聞いてたんだ…
いじめっ子たちも同じことを思ったのだろう。
相手が年上ということもあってかなり焦りぎみだった。
「人間なぁ…転んだだけでも打ち所悪ければ死ぬかも知れないんだぜ…?」
あ、死んだな…いじめっ子たち。
なんて怒ってますオーラ全開の静雄さんをのんきに見ているわけにもいかず。
「だ、だめです大丈夫ですから!!私生きてますから!!あいたたたうおお膝の傷が急にいたくなってきた…これは早く消毒してもらわないと!!」
相手は小学生。
さすがに手加減するかも知れないが下手しなくても喧嘩を見た限りでは相手は死んでしまうだろう。運が良くても大怪我。
それはいろんな意味で危険だ。
「あ?でも」
「いいんです!!」
静雄さんの前をちょこちょこと動き回って妨害する。
その間に女子たちは逃げていった。
――
「っ…」
「ほんとに大丈夫かよ…」
「はい。こんな傷すぐに」
「いじめ」
「…大したことないです。」
「こんな怪我もつくってか?」
「それは…」
まっすぐな目を見て思わずそらしてしまう。
「平和島静雄」
「え?」
「俺の名前だ」
「あ、あぁ…鈴風愛実です。」
「愛実、困ったら…いつでも、まぁ会えたときは言えよ」
「は、はいっ…!!ありがとうございます」
親にも言えてなかった私にはその言葉はかなり嬉しいもので。
「にやにやすんなよ…」
「えへへ、じゃあさっそくいいですか?」
「ん?なんかあんのかよ」
「この傷私が勝手に転んで作りました」
「……………」
それが、はじめてあった日のことで、それから少しのあいだだったけれど…静雄さんと私のなんだか奇妙な関係がはじまった。