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第8章 憲兵


「同期の頼みだ。
出来る限りの事はしてみよう。
さて、そろそろ行こう」

ナイルは立ち上がるとエルヴィンから紙を受け取った。

その紙は例の婚姻承諾書だった。

「エミと言ったか。
今から王に謁見するが、くれぐれも失礼の無いようにしなさい」

「分かりました」

そう答えるとエルヴィンがエミの肩に手を置いた。

「私とはここで別れる。
健闘を祈っているよ」

優しく微笑むエルヴィンを見てエミは勇気を貰った。

これから何が待ち受けているか分からないが、調査兵団の皆の事は絶対に忘れない…

「団長、有難うございました」

エルヴィンと別れる際に敬礼をした。

必ずまた会う…

そう誓った。

敬礼した後エミはナイルの後ろをついて行った。

「中央は調査兵団とは全く違うと思ったほうが良い。
憲兵は腐っていると言われているが、中央はそれよりも酷い」

前を向いたままナイルは小さく言った。

暫く歩いていると大きな扉に着いた。

「ここからは中央の敷地になる」

見張りの兵士が扉を開けると別世界のような光景が広がっていた。

驚きながらも歩いているとやがて豪勢な扉の前にたどり着いた。

「ここが謁見する部屋だ。
今回は俺も入るが、もし次に入る事がある時は君1人だ」

「はい」

エミが了解したのを聞いてナイルは扉の横にいた兵士と話をした。

すると兵士は扉を開き部屋の中に向かって敬礼をする。

「ナイル師団長とエミ・ユベラが到着しました」

「入れ」

中から声がしたのを合図にナイルとエミは部屋に入り敬礼をする。

そして部屋の最奥に座っている人物を見て驚いた。

幼い頃に父が見せてくれた写真に写っていた人物と顔がそっくりだった。

「近くに来なさい」

そう言われてナイルより一歩下がった距離で王の目の前に立った。

「調査兵団から預かった承諾書です」

ナイルは紙を王に渡すと受け取った紙を見てエミを見る。

「エミ・ユベラ、お主は婚姻を望んでいるのか?」

「はい」

王の質問に答えると王は横に立っていた兵士に紙を渡した。

「この婚姻は認めん。
君を私の側近にする」

最悪だ。

予想はしていたが本当に側近にされるとは…

エミは何も言わなかった。
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