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第8章 憲兵


「エミ、着いたよ」

その言葉で目を覚ます。

「随分眠っていたね。
そんなに疲れていたのかい?」

微笑みながらエルヴィンはエミの手を取り、馬車から下りた。

空を見上げると夕方になっている事が分かった。

「荷物は部屋に運ぶように手配しているから心配しなくていい」

そう言ってエルヴィンは憲兵の兵舎に向かって歩きだした。

後ろをついて行くと入口に兵士が立っている。

「ナイル、待たせてすまない」

ナイルと呼ばれた兵士はこちらに近付いてきた。

「今来た所だから気にしなくて良い。
その子が例の兵士か?」

「そうだ。
エミ、紹介しよう。
憲兵団師団長のナイルだ」

そう聞いてエミは慌てて敬礼した。

「エミ・ユベラです」

「よく来たね。
楽にしてくれ」

そう言って手をヒラヒラと振る。

「ここでは話せないから俺の部屋に行こう」

ナイルが歩き出したので2人もついて行った。

憲兵の兵舎は調査兵団の兵舎と違ってあまり変わった所は無かった。

ある部屋の前で止まるとナイルはドアを開いた。

広い...

最初にエミはそう思った。

団長の私室も広いがそれよりも広い事に驚いた。

これが憲兵団と調査兵団の違いかと思わずにいられなかった。

テーブルに備え付けられた椅子に座るとナイルは無表情で反対側に座った。

「謁見まであまり時間が無い。
手短に頼む」

そう言うとナイルは腕を組んで背もたれにもたれかかった。

「では言わせて貰おう。
エミの動向を定期的に報告して欲しい」

「ほぅ...
だが彼女は中央行きだ。
俺では把握出来ん」

「それは分かっている。
1ヶ月に1度で構わないから彼女と接触してくれ」

エルヴィンは無表情で話す。

「どう接触しろと言うんだ」

「それはエミの非番の日で構わない。
その日ぐらいは自由に動けるだろう」

「それも難しいな。
中央は王の命令で動いている。
いくら非番でも中央の兵舎から出れるか分からん」

ナイルは表情こそ変わらないが考えているようだった。

「まぁ、努力はしてみるが…
もし俺と会っているのがバレたら彼女がどうなるか分からないがそれでも良いか?」

「構わない」

エルヴィンは冷たい言葉で了承した。
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