第8章 憲兵
「師団長に会うと言っても、もし王の側近になれば難しいのでは…?」
「それについてはナイルに会ってから話そう」
にっこりと笑いながらエルヴィンは言った。
エルヴィンの計画している事は的確で、実際にエルヴィンが調査兵団の団長になってからは死者数が明らかに減っている。
少しの間沈黙が続くと馬車が止まった。
「休憩だ。
馬車から下りよう」
そう言って下りるエルヴィンの後に続くようにエミも馬車を下りた。
下りると直ぐに目の前に入ったのは、広い平地だった。
地面には草が青々と生い茂っている。
「ピクニックにピッタリだろう?」
そうにこやかに話す彼は近くにあった木陰に座り手招きをした。
エミがエルヴィンの横に座るとひんやりとした風が吹いて気持ち良かった。
「さて、リヴァイが作った弁当でも頂くとしよう」
そう言ってエルヴィンは袋から弁当を取り出し蓋を開ける。
「…リヴァイらしいな」
そう呟いたのを聞いてエルヴィンの弁当を覗くとパンが1つ入っているだけだった。
思わず笑ってしまったエミは自分の弁当を開けると色とりどりの野菜や肉と共にパンも入っていた。
「私のと大違いですね」
笑いながら言うとエルヴィンは参ったという顔をした。
「上司よりも婚約者優先か。
リヴァイのやりそうな事だな」
エルヴィンも笑って2人は弁当を食べた。
エルヴィンは1分程で終わったが…
リヴァイの手作り弁当を満喫したエミは背伸びをした。
野原に吹く風は眠気を誘う。
「さて、そろそろ馬車に戻ろう。
約束の時間に遅れてしまう」
その言葉で2人は馬車に戻った。
またガタガタ揺れる馬車の中でお腹が満たされたエミは眠気と格闘していた。
エルヴィンはというと...
(寝てる...)
毎日忙しい為、あまり睡眠が取れていないのであろう。
エルヴィンの寝顔を初めて見たが綺麗だった。
そういえばエミはリヴァイの寝顔を見た事が無い。
一緒の布団で寝た事は何度もあったが、いつも先にエミが寝て、起きた時はすでにリヴァイは起きていた。
時間からして5時間も寝ていない筈だ。
だから隈があるのか...
そう考えながらエルヴィンの寝顔を見ているとエミも眠気に負けて座ったまま体を壁に委ねながら眠った。