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第8章 憲兵


ガタガタと揺れる馬車の中で、エルヴィンは憲兵団の師団長であるナイルについて語っていた。

「ナイルはなかなか扱い難くてね。
私が訓練兵時代はライバルだったんだよ」

陽気に話すエルヴィンによって気持ちが少し楽になる。

「それに同期の女性に2人して恋をしてしまったんだ。
ナイルも私も成績上位10人に入ったんだが、私は憲兵ではなく調査兵団を選んだ」

「団長、上位だったんですか?」

「一応ね。
そうは見えないだろう?」

笑いながら話すエルヴィンは楽しそうだった。

「団長は何故調査兵団を選んだんですか?」

その言葉に微笑みながら答える。

「難しい質問だね。
巨人を絶滅して自由になりたいという気持ちもあったんだが...」

そう言うといきなり難しそうな顔になった。

「私が幼い頃に父が憲兵によって殺されたんだ。
人類が何故この狭い塀の中で暮らす事になったのか、巨人の事を推測をしていてね。
それを私に教えてくれたんだが、それを私が友達に言いふらしたら直後に亡くなった。
私が殺したようなものだ」

苦笑いしながら答えたのを見て聞いてはいけない質問だと気付いた。

「すみません...
辛い過去だったとは知らずに...」

「別に構わないよ。
調査兵団を選んだ理由は私とエミでは違うが、憲兵が嫌いなのはお互い同じだ。
だが君にはリヴァイがいるじゃないか」

リヴァイという名前を聞くとさっきの光景を思い出した。

皆が居る前で泣いた彼を見てエミ自身も驚いたが、きっと誰も見た事がない姿だ。

元ゴロツキで今は人類最強。

粗暴ではあるが仲間の存在を何より大切にする。

だから皆の憧れでもあったが...

いつも目つきが悪い為に近寄り難い存在でもあった。

リヴァイの事を思い出すと胸が締め付けられる感覚に陥った。

会いたい...

エミは悲しい気持ちに再び襲われた。

兵舎を出発して数時間。

それが何日も経ったように感じる。

ため息をつくと頭をポンポンと叩かれた。

「そんなにリヴァイに会いたいのかい?」

「...はい」

俯いたまま答えるとエルヴィンは優しく答えた。

「明確な事は分からないが、数年だけ待ってくれ。
必ず君を迎えに行くよ」

「えっ...」

エミは驚いてエルヴィンを見るとそこにはいつもの微笑んでいる顔があった。
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