第8章 憲兵
荷物を出来る限り一気に運びたかったエミは両手両脇を使って持とうとしていたが、予想以上の重さで悪戦苦闘していた。
「そんな一気に持つのは無理だろう」
エルヴィンが荷物運びを手伝いに来た。
「何度も往復するのは大変なので」
そう答えると、軽々と本の束を持ちエルヴィンは驚きながら言った。
「なかなかの量だね。
もう少し減らしたらどうだい?」
「それは出来ません。
昨日誕生日プレゼントで兵団の皆から頂いた物なので」
「君の誕生日は昨日だったかな…」
「本当は明日なんですが、私が憲兵に行くので早めにお祝いして下さいました」
にっこりと笑顔を見せ、服が入った袋を持ち馬車へと向かった。
エルヴィンのお陰で1回で荷物を運び終えた所でエミはある事に気が付く。
「兵長はどちらに行かれたんですか?」
「リヴァイなら部屋に戻ったよ」
「…そうですか」
やはりリヴァイは来てくれないのかと思うと寂しくなった。
「エミ〜!」
ハンジが走ってエミとエルヴィンの元にやって来た。
ハンジの後ろには部下達が走って来ている。
「もう行くんだね」
「はい。
ハンジさん、今まで有難うございました」
「そんな一生会えない様な事言わないでよ。
またいつでも戻っておいで」
優しく笑うハンジを見てエミは思わず抱きついた。
やはり慣れ親しんだ場所から離れるのは辛い。
「リヴァイも相変わらず強情だね。
会えなくなるかもしれないのに…」
「いいんです。
兵長も辛いでしょうから」
そう言ってハンジから離れて馬車に乗ろうとした時...
兵舎の入口から誰かが走ってきた。
「エミ!」
その声に振り向くとリヴァイが珍しく息を切らして現れた。
そして思いっきりエミを抱き締めた。
「兵長…」
「エミ…」
エミは腕をリヴァイの背中に回すとリヴァイは静かに言った。
「俺達はいつまでも一緒だ。
どんなに離れても俺にはお前しかいない。
だから…だから!」
リヴァイは今まで見た事がないぐらい泣いていた。
「お前も俺も生きてまた会えた時には今度こそは結婚しよう」
その光景を見た兵士達は驚いて言葉が出なかった。
エミはリヴァイの気持ちを受け止めるように優しく「はい」と答えた。