第1章 夢
「んっ...」
エミはゆっくりと目を開けた。
いつから横になっていたのだろう。
辛うじて目を開けると目の前に天井が見えた。
ランプの灯りからして夜であることは間違いない。
「気がついたか」
ふと声が聞こえ、視線だけ横に向けるとソファーに座り手に書類を持った人影が見えた。
そしてその人影はこちらに近づいてくる。
まだ視界はぼんやりとしていたが、近づいてくる人影は声や背丈からして一人しか思いつかない。
「リ...ヴァイ...兵長...?」
「まだ起き上がるな」
そう言われて無意識に起き上がろうとしていた体をベッドに戻される。
そして背中に痛みが走った。
「...つっ...!!」
その時何故自分はベッドで横になっているのか思い出した。
昨日立体機動の演習中に意識が遠のいたのだった。
「派手に落ちたからな。
まだ体が痛むだろう。
背中を打っただけで済んで良かったが、お前らしくもない」
「...すみません」
バツが悪そうに言うと温かい手で頭を撫でられる。
いつもなら姿を見るだけで竦んでしまう兵長が相手なのに、今は何故か頭を撫でられただけで温かい気持ちになった。
そういえばここは自分の部屋だ。
何故兵長はここにいるのだろう。
やっと視界がハッキリしてきたので兵長のほうを見ると、いつもと同じ無表情な顔だったがその目は温かい目をしている様な気がした。
「どうした?」
顔をじっと見られているのが気に食わなかったのか、眉間に皺を寄せて聞いてくる。
「...あっ、いえっ...その...
どうして兵長が私の部屋にいるのかと思いまして...」
「あぁ...」
そう言うとリヴァイは頭を撫でていた手を離し、ベッドの隣にあった椅子にドカッと座った。
「お前のことが気になってな。
ここで仕事をしていた」
そう言うとチラッと机に置かれた書類の束を見た。
その様子を見て申し訳ない気持ちでいっぱいになり、同時に昨日の演習中での失態が恥ずかしくなり毛布で顔半分隠し後悔する。
「...申し訳ありません」
「謝らなくていい。
とりあえず、まだ安静が必要だ。
明日も休みにしておいたからゆっくり休め」
そう言って、また頭を撫でられる。
(兵長って、本当に部下想いなんだな...)
そう思いながらエミはまた深い眠りについた。