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第16章 幸せ


そして等々エミが退団する日になった。

荷物は殆どそのまま部屋を置いておく事にした。

そうでないと、兵士達と交わした約束を守れない様な気がしたからだった。

兵舎の入口には既に馬車が用意されており、いつでも出発する準備が出来ていた。

「エミ、離れるのは悲しいけどさ…
必ず戻って来るって信じてるから…」

ハンジがエミの手を握り泣きじゃくっていた。

「お前はガキか」

その様子を見てリヴァイが言うとハンジは俯く。

「だってエミは私の妹みたいな物だもん。
退団だなんてさ…悲しいよ…」

「家までは馬で15分で着く。
会いたければ会いに行けばいいだろ」

「へっ…そんな近いの…?」

呆気に取られるハンジを見てエミは思わず笑ってしまった。

「兵長がわざわざここから近い家を探して下さったんです。
ハンジさんが非番の日には是非来て下さい」

「駄目だ。
家には居れない」

「何で!?」

「会いたければ家の外で会え」

相変わらずの2人のやり取りはやっぱり面白い。

「そろそろ行くぞ」

リヴァイがそう言うとハンジはエミを優しく抱き締めた。

「絶対に…絶対に会おうね。
約束だよ?」

「はい」

エミは少し涙を流しながら抱き締め返して馬車に乗った。

馬車が出発すると周りを取り囲む様に並んでいた兵士達が敬礼をした。

(必ずまた戻る…)

そう思って涙が溢れそうになった目を擦る。

「あいつ…巨人の研究が無い限り、非番の日は必ず来るぞ」

「でしょうね。
でもその方が私は嬉しいです」

にっこりと笑って答えると「何故だ」と言われた。

「だってハンジさんから兵団の状況を聞く事が出来るじゃないですか。
秘密事項はさすがに無理だと思いますが」

「そうだな。
だがハンジと話すのは程々にしとけ」

「分かってます」

そう言いながら雑談をしているとあっという間に着いた。

「ほ…本当に近いですね…」

今日から住む家の中に入り見渡すと外見では質素に見えたが、中はかなり広々としていた。

「一応個室は3つある。
たまたま見つけて直ぐに買った」

「買ったんですか!?」

「当たり前だ。
借家に住むのはお断りだ」

リヴァイらしくて思わず微笑む。

「荷物は…殆ど無いな…」

「いつもの事ですよ」
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