第16章 幸せ
「診断書を書いてくれ。
エルヴィンには俺が直接話す」
そう言うと医師は直ぐに診断書を書き、それを受け取るとまた強引に連れて行かれた先はエルヴィンの執務室だった。
ノックをして返事を待たずに入ると2人を見て少し驚いた様子でエルヴィンは見た。
するとリヴァイは先程書かれた診断書を目の前に置く。
その紙を見たエルヴィンは更に驚いた。
「これは本当なのか?」
そう言ってエミを見るとリヴァイは答えた。
「最近こいつの顔色が悪いと思っていたが、それが原因だ」
「そうか…」
そう一言だけ言うと何か考えている様だった。
そして少し間を開けて聞いてきた。
「診断書ではもう安定期には入っている様子だが…
自分で気付かなかったのかい?」
「…はい。
ただ太ってきたのだと思っていました」
「自分自身の体なのに何故気が付かなかった…」
エルヴィンもリヴァイと同じ事を言ってきた。
それを言われてしまっては何も言い訳は出来ない。
「そうなると、君は退団しなくてはいけないね」
「退団ですか!?」
予想していなかった言葉にエミは驚く。
「当たり前だろ。
こんな所で子供なんか育てられねぇだろ」
「ですが…私は退団したくありません…」
「君がそう思ってくれるのは嬉しいが…
リヴァイの言う通りここで子育てはさすがに出来ないよ」
苦笑いしながら答えるエルヴィンを見てエミは静かに泣いた。
それを見たリヴァイは優しく抱き締める。
「こうなってしまったのは俺のせいでもある。
だが、このままここに居ても妊婦のお前に何が出来る。
壁外調査は無論、子供が生まれたら他の兵士が余計な気を使ってしまうだろ」
リヴァイの言っている事は分かる。
だが、エミは退団しなければならないという事実を受け止める事が出来ないでいた。
「エミ」
エルヴィンは努めて優しい言葉で話しかけてきた。
「君を失うのは正直兵団にとっては大きな損失だ。
だが君とリヴァイの事を考えると退団が1番良いと私は思う。
リヴァイは家族の温もりを知らない。
だから、君にはリヴァイに家族の温もりという物を教えてあげて欲しい」
その言葉を聞いてエミはやっとの思いでリヴァイを見た。
「兵長も…同じ考えですか?」
「まぁな」