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第13章 帰還


荷物を纏めていると突然エルヴィンが話しかけてきた。

「いきなりの出発になるが、王に挨拶はしなくてもいいのかい?」

「はい。
きっと今日の事を想定していたからこそ『幸せになれ』という言葉を言ったんだと思います」

「そうか。
それならそれで良いんだが…
相変わらずの荷物だね」

そう言われるのも無理は無かった。

中央に来てから街へ出掛ける事も無かったので来た時と同じ物しか無かった。

「そういえば」

ふと思い出した様にエミは聞いた。

「ここへ来たばかりの時にメモをどなたかがドアの隙間から入れてきたのですが…」

「ああ、それは私が頼んだ物だよ」

エルヴィンはにっこりと笑いながら言った。

「王との謁見が出来るかどうか分からなかったからね。
念の為という事だよ」

「相変わらず手を打つのが早いな」

リヴァイはてきぱきと荷物をまとめ、ミケが予め用意していた馬車へと荷物を次々と運んで行く。

「兵服はどうするんだい?」

そう言われてエミは初めて気付いた。

「さすがにこの兵服は置いて行きたいですね」

苦笑いしながら答えた。

「では私とミケは馬で帰るから君はリヴァイと一緒に馬車で帰っておいで」

エルヴィンは微笑んで部屋を出ると部屋にはリヴァイと2人きりになった。

するとリヴァイは椅子に座りエミの姿を上から下まで眺めた。

「どうされたんですか?」

「似合ってないな」

相変わらずの粗暴な態度を見て思わず笑ってしまった。

久しぶりにリヴァイと2人きりになれたのは嬉しかったが、一刻も早く着替えたい。

「あの、お先に馬車で待っててくれませんか?
直ぐに着替えるので」

「ここに俺が居たらいけない理由でもあるのか?」

「大ありです!
着替えるんですから見ないでください!」

そう言ってリヴァイを無理やり部屋から追い出す。

1人になった所でエミは急いで着替えた。

やっとこの兵服を着なくて済む。

そしてタンスから調査兵団の兵服を取り出して着替えた。

自由の翼のエンブレムが描かれた兵服を着る事が出来るのが嬉しくて堪らなかった。

憲兵の兵服は一応きちんと畳んでテーブルに置いた。

エミは憲兵の兵服に見向きもせずにリヴァイが待つ馬車へ向かおうと部屋のドアを開けると、リヴァイが立っていた。
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