第3章 帰りたい場所と描く未来
近くの公民館で巫女舞の練習をする。
普通の静かで優雅な巫女舞とは違い、
夏祭りの巫女舞は近年作られたせいか、
舞の動きが激しい。
あたしの周りで踊る役の小学生たちも、
暑さの中で、練習をして汗だくだった。
『はい、麦茶。みんな休憩しなよ。』
紙コップに入った麦茶を彼女らに差し出す。
ありがとう、と受けとって飲むものの、
彼女らはすぐ練習にもどった。
祭は子供たちにとっても大切な行事だ。
その光景を微笑ましく眺めていると
後ろから名前を呼ばれた。
『リン、練習は終わりそうか?』
『あ、お兄ちゃん!』
話しかけてきたのは兄である小嶺ハヤト。
ブルーのシャツの第二ボタンまであけ、窓の外から暑そうな顔をして中を除きこむ。
兄は同じ高校生の三年生。
自分でいうのもなんだが、兄はモテる。
その証拠に、今練習所にいる女子の視線は兄に向けられている。
『あと少しで終わるよ。次の電車に乗らないとバンドの練習間に合わないもんね。』
『あぁ、悪りぃが間に合わせてくれな。』
『うん!』
と、いってあたしは舞の練習へと戻る。