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闇の底から

第1章 3月9日



玲にジト目で見られた輝は凜の出身高校の桐桜高校へ電話をした。
『ああ、相楽さんのお知り合いですか…ではあのこともご存知で?』
そう語るのはかつての担任教諭で、新聞記事でそのことを知ってから相楽家に電話をするが繋がらないとこぼした。
「実は病院側も連絡を付けられないようで…しかも相楽凜さんはこのことを…『忘れてるのよねっ?』覚えていません」

なんということだ。こんなこと、どこかの小説でしか見たことも聞いたこともなくて輝の心の中には動揺しかない。

今日は病院に様子見で入院だからいいが、その後この子はどうやって一人で生きていくのだろうか?親戚は東北と関東にいるそうだが、どのみち凜がここから移動することは不可能だ。春からはS大学の一回生になる。

夢を語ったあの輝く瞳に釘付けになった3年前からきっと、本当に夢を叶える力を持っていて、どんなに不利な状況でも跳ね返す力も持ち合わせている、そんな子だと思っていたんだろう。

電話を終えて病室に戻ると拓真が来ていた。
『…ちゃんは可愛いねー、俺の彼女になんない?』
思わず足が止まった。凜の隣のベッドのおばあさんに「ニイちゃんも大変やねぇ…がんばりやぁ」と声をかけられ、否定するのも面倒でカーテンの中に意識を向ける。
『やだなもうからかわないでくださいよ玲さんといい、高津さんといい…皆さんは私には勿体無いですって。』
『凜ちゃんカワイイ!そんな控えめなところもまたグッとくる〜!!絶対私のカノジョにするー!!』
『ずりーよ玲先輩!だいたい玲先輩彼氏いるじゃないですか欲張りですよ!!』

照れていた凜がさらに赤くなって
『し…ししょー!!語って下され!!』
と爛々と輝く瞳を向ける。
『これはまたな、別の機会に「なあに勿体ぶってんだよ玲先輩!輝先輩と仲良く二人で…『高津!っ!』」

凜にはそれで十分だった。
やはり東條先生には横にならんでお似合いな彼女がいたんだ。2年前は「いないって、マジで」と笑っていた先生も今は4回生。モテないはずがない。
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