第12章 【縁下力】それでもやっぱり
「縁下くんは優しいから私に遠慮してたんだよね?、告白した時、好きでもない私の返事を受けてくれてさ」
「え…?、何言って」
「縁下くん、私のことなんとも思ってないんでしょ?」
「今年に入って一回も会話もメールもしてない、赤の他人ですみたいな感じだった
校内ですれ違っても頭下げるぐらいだし、目があってもよくそらされたし、正直言って私のこと
嫌いなんでしょ?」
彼女は縁下の足元を見つめながら無表情でつらつらと自分の思いを言葉に表す。彼の返事次第ではもうこれでお別れなんだ。最後は印象に残らないような別れたかにしよう、泣くなよ私。
微かに震えているの肩。縁下はそれを見逃さなかった。
彼は震えている肩を優しく包み込むように抱きしめた。そこまで大きくない彼だが、小さい彼女を包み込むのは十分で、大きな安心感を与えた。
「な、なに」
「ごめんな」
落ち着いた低い声が鼓膜を振動させ彼女へと伝わる。
「俺が悪かった、は全然悪くない。付き合ってるのに、ほおっておいた俺が悪いんだ」
彼の途切れ途切れの言葉にそっと耳を澄ます
「俺はを嫌いになったことなんて一度もないからな、に告白されたとき、心臓が飛び出そうなぐらいドキドキして嬉しかった」
「好きな子に告白された!!これからはこのことずっと一緒にいられるんだって本当に嬉しかった」
「けど、現実はそこまで甘くなくてさ、部活も委員会も忙しくてなかなか会えなかった、すれ違ったときも妙に変な意識をして話しかける勇気がなくて、只君の背中を見てて、いつか、また前みたいに話せたらなって考えるばかりだった」
「だから今日、勇気をだして一緒に帰ろうって誘ったんだ」
「嫌いだったらこんなことするわけ無いだろ、」
「俺の言い訳は以上です」
なんていってポンポンっと彼女の背中を軽く叩いた。
話を聞いた彼女は安心したのか涙だ溢れ縁下の服をぐっしょり濡らした。おまけに鼻水まですする音が聞こえてきて、嗚咽混じりの可愛いとは言えない鳴き声が彼の中から聞こえてきた。
の頭を割れ物を扱うようにそっと優しく撫でながらこう言った
「一緒にかえろっか」
その言葉に彼女は小さく頷いた